遺産分割協議書の作成
財産の分け方が、第三者から見ても明確に分かるように記載しておくことが、とても重要です
戸籍調査を的確に行って相続人を特定しておくことが、財産をどう分けるかを明確化にすることとともに、非常に重要です。
あとから新たな相続人が出現した場合は、話し合いをやり直さなければなりません。
このように、有効な書類とするためには、明確な財産の分け方に関する内容の記述と相続人全員による署名押印が、最も注意したいポイントです。
正式に作成した協議書なら、たとえ不満などが残る場合でも、全員が同意したことが明確になり、対外的にも効力を発揮することになります。
公正証書遺言があれば、遺産分割協議書が不要なケースも多い
有効な遺言書があれば、基本的には不要です。
亡くなった方の財産は、法定相続人に与えられる遺留分の侵害がない限り、遺言に沿って財産を分けます。
主に利用される遺言書には、公正証書遺言と自筆証書遺言があります。
公正証書遺言は、証人二人の立会いの下で公証人が確認して作成されるため、有効性についての問題はありません。
また、遺言は公証役場で保管されるため、偽造などの心配もありません 。
一方、自筆証書遺言の場合、有効性について家庭裁判所の検認手続きを受ける必要があります。
代表的なものでは銀行預金の解約、不動産の名義変更、株式の名義変更などがあります(ただし銀行などは相続人代表1名を決めさせ、その人の口座にまとめて入金するという扱いが実務的には主流です)。
銀行は被相続人(亡くなった人)の死亡を知るとただちにその人の名義の口座を凍結させて預金をおろせないようにする仕組みになっています(銀行が死亡を知らなければ相続人がカードなどで出金できてしまうことがありますが、後で他の相続人とのトラブルになることがあります)。
遺産分割協議書の本文の記載方法
遺産分割協議書に必ず書いておきたいのは、「被相続人の氏名、死亡日、最後の本籍」、「被相続人が死亡したので相続が発生し、法定相続人全員で話し合った旨」、「財産の内容と相続する人の氏名、続柄」、「協議の成立した日付」です
土地の場合は「所在」「地番」「地目」「地積」を、建物の場合は「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」を記載します。
預貯金の場合は「銀行名」「支店名」「口座の種類(普通、当座など)」「口座番号」を記載します。残高は記載しなくてもかまいません。
全員の署名押印が必要!
行方不明の人がいる場合もその人を外してよいのではなく「不在者の財産管理人」という代理人を立てる手続きが用意されています。
遺産分割協議書は、相続人全員が実印を押し直してくれるのであれば何度でも作り直すことができます。
遺産分割協議書を公正証書にしてトラブル回避
公正証書として作成する遺産分割協議であれば、内容の正確性が証明されます。このため、相続登記や口座の名義変更など、対外的にスムーズな手続きを行うことができます。
正確な協議書を作成することができれば、対外的な面だけでなく、相続人同士の紛争を回避することができます。というのも、協議書を作成する場合は、公証人は法律の専門的立場で、まず相続人全員の意思を確認します。
その上で作成するため、同意した内容について公的に証明され、将来的な紛争を避けることができます。
公証人が作成した遺産分割協議書は、原本が公証役場で20年間保管されます。しまい忘れや紛失の心配もなく、将来に備え安心して保管できます。
遺産分割協議書のサンプル
遺産分割協議書
被相続人 甲野太郎
生年月日 昭和○年○月○日
本 籍 埼玉県東松山市○町○丁目○番地
平成○年○月○日上記被相続人甲野太郎の死亡により開始した相続における共同相続人全員は、民法908条に基づく遺言による分割の指定及び禁止のないことを確認したうえで、被相続人の遺産を協議により下記のとおり分割する。
1. 次の不動産は甲野花子が相続する。
所 在 東松山市○町○丁目
地 番 ○番○
地 目 宅 地
地 積 ○○・○○㎡
所 在 東松山市○町○丁目 ○番地○
家屋番号 ○番○
種 類 居 宅
構 造 木造スレート葺2階建
床 面 積 1階 ○○・○○㎡
2階 ○○・○○㎡
2. 次の預貯金は甲野花子が相続する。
○○銀行 東松山支店 普通預金 口座番号 ○○○○○○
○○銀行 東松山支店 定期預金 口座番号 ○○○○○○
ゆうちょ銀行 通常貯金 記号 ○○ 番号 ○○○○○○
3. 相続人全員は、本協議書に記載する以外の遺産を、甲野花子が取得することに同意した。
上記のとおりの協議が成立したので、この協議の成立を証明するために相続人ごとに本協議書を作成する。
令和○○年○○月○○日
埼玉県東松山市○町○丁目○番○号
甲野花子 (実印)
埼玉県東松山市○町○丁目○番○号
甲野次郎 (実印)
埼玉県東松山市○町○丁目○番○号
甲野三郎 (実印)
POINT
遺産分割協議書の形式や書式に特に決まったルールはありません。縦書きでも横書きでもどちらでもよく、もちろんワープロで印字しても構いません。ただし、トラブル防止のため、相続人の住所と氏名は、手書きのほうがよいでしょう。
土地や建物などの不動産は、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されているとおりに、正確に記載しましょう。少しでも間違っていると、法務局で名義変更の手続きが受け付けられない可能性もあります。
預貯金、車、株式等の遺産や債務はもれなく記載しましょう。できるだけ財産を特定できるように正確に記載します。
相続人全員の署名と実印の押印が必要です。遺産分割協議書は1通だけ作成しても構いませんが、相続人同士平等に保管しておくため、相続人の数だけ同じものを作成しておいたほうがよいでしょう。